笹の葉 さらさら
軒端に揺れる
お星様 きらきら 金銀…
…すなごってどういう意味だっけ?
七月七日
「どしたの?」
「いや、七夕の歌でさ、最後の「すなご」ってあるけどさ。
どーゆー意味だっけとか思って…。」
「ああ、「砂」の「子」って書いて、金箔とか銀箔の粉末のことなんだって。
短冊に吹き付けるの…。」
「へえ…宮埼先輩って博識。」
「あはは、ちょっと本で見たのを覚えてただけよ。」
今日は七夕の日。
猿野天国は、今の「恋人」である宮埼真理亜と彼女の自宅の庭で時を過ごしていた。
クリスマスやバレンタイン程盛り上がるイベントでもなく、
まして毎日の野球部の練習が忙しい天国は、特に七夕を気にしてはいなかった。
しかし、その日になって宮埼から誘いが来たのだ。
七夕を一緒に祝わないかと。
宮埼は普段こういったイベントに積極的に参加する方ではなかったが。
無下にするわけでもなく。
時折こういった場を実にさりげなく設けていた。
それは派手でもなくささやかで。
宮埼の家はかなり裕福といえるほどで、庭といってもちょっとした広場くらいはある。
そこで庭の池を前に笹を飾り、二人で甘いお酒を味わいながら星を眺めて時を過ごした。
天国がいつも野球部で騒いでいる姿を見ている者たちからすれば意外と思われるが。
天国はこういった静かな時間を好んでいた。
それを知った上での宮埼の心遣いは、天国にも暖かな気持ちを与えていた。
「先輩、今日はありがと…。」
「ううん、私こそ急に無理いってごめんね。
こっちこそ忙しいのに時間作ってくれて…お礼言わなきゃ。」
宮埼は天国が他に好きな少女がいることがよく分かっていた。
それでもいいからと天国に付き合うことを了承させている事も。
そのことが天国に負担をかけていることも。
でも、それでも宮埼は天国の傍にいることを望んだ。
自他共に認める穏やかな性格の自分には今までなかったほどの強い感情で。
宮埼の葛藤は、天国にもよく感じられた。
半端な同情で彼女と付き合うことが正しいとは思っていない。
本当に彼女のことを思っているのなら交際を承知するのは間違いだと。
そう思っているのに。
############
「…ねえ、短冊には何て書くの?」
「そうっすね〜。やっぱ甲子園?」
内心の葛藤を心の片隅にしまいながら、二人は穏やかに七夕を過ごす。
それは間違いであるかもしれないが。
今はこの時間を大事にしたいから。
「先輩は?」
「内緒。もう昨日のうちに一番上にくくりつけておいたの。」
「用意周到〜〜。
何か気になるな。」
「ふふ、上の方にくくれば願い事がかないやすいでしょ?」
「あ、じゃあオレも上の方につけよ!!」
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一通り短冊をかけたあと、天国は用意されていた長椅子に腰掛ける。
腰掛けて星空を見上げる天国を 宮埼は横で静かに眺めた。
「かなうといいね。
猿野くんの願い…。」
「ま、オレはかなわせますけどね!」
天国はそう言って笑った。
宮埼はそんな天国に寄り添った。
「先輩?」
(…私のお願いは…かなったらいけないかもしれないね。)
ずっとずっと猿野くんの傍にいたい。
今この時間だけでも罪なのかもしれないのに。
「…ごめんね。」
彼女の呟きが耳に入ったのか。
天国は宮埼の肩を抱き寄せると。
彼女の唇に口付ける。
五色の短冊
私が書いた
お星様きらきら
空から 見てる
end
歌詞引用:うたまっぷ歌詞検索様
2ヶ月遅れのリクエストです。いつもほんっとうに申し訳ありません!!
さて女性と過ごす、ということで誰にしようか悩んだ結果。オリキャラに逃げました(T▽T;)
一応彼女は以前書いた「Both Sides」という小説に出てます。
彼女との関係、ビジュアルはこちらの本文とあとがきにありますので、できましたらそちらでご確認ください。
ホントはちゃんと女性キャラ使うつもりだったんですが…オリジの彼女が一番しっくりきてこうなりました。
それにしても結局二人ともエゴイストなような…。
なんかどっちつかずの話で申し訳ない…。
微炭酸様、素敵リクエスト本当にありがとうございました!
こんなんしか書けない奴ですが、またご訪問ご感想などいただけたら天に舞い上がります。
本当に気長にお待ちくださってありがとうございます!
では今日はこの辺で…(脱兎)
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